うちの親、認知症かも。。part.1

健康や病気のこと

「最近うちのおじいちゃん(おばあちゃん)、物忘れがひどくなったな。。。」

よくあることだと思います。はじめに結論を言ってしまうと、ご家族の物忘れが気になった場合はいつでも診療所でご相談ください。

認知症は、昔は「痴呆症」などと呼ばれていました。今思えばひどい名前です。なんでも名前を変えればいいものではない、とも思いますが、さすがに痴呆症はひどいかな、と思います。年齢とともに記憶力が落ちることは誰にとっても避けられないことで、「お年相応」に物忘れが出てくることは、ある意味避けようがありません。

ただ、ご本人、ご家族が生活の中で困りごとが出てくるような場合、「お年相応」のレベルを超えて、医学的にも認知症と言わざるを得ない場合があります。今日はその認知症についてのお話です。

高齢者の認知症の大多数、60〜80%が「アルツハイマー型認知症」であると言われています。60歳未満で発症することはまれで、65歳以降では5つ歳をとるごとにこの病気になる方は2倍ずつ増えていきます。認知症にはいくつかのタイプがあるのですが、その多くは脳の神経細胞が変性して抜け落ちてしまうことが原因で、アルツハイマー型認知症もそうです。正確な原因はいまだにはっきりとはしておらず、決定的な治療法もできていないのが現状です。

症状で初めに目立つのは「記憶障害」で、これこそが認知症の中心です。さっき朝ごはんを食べたのに忘れてもう一回食べてしまうとか、「お金を取られた」などの被害妄想も実は記憶障害の中に入ります。他には、同じ話を何回も話す・質問する、外出時に物を置き忘れることが増える、などの症状が出ます。

昔のことはよく覚えていたり、車の運転はできたりします。要するに、最近のことが覚えられないのです。なので、久しぶりに会ったご親戚やご友人と昔話に花を咲かせた、というような場合は、案外気づかれなかったりもします。

記憶障害の他には、
・お金の管理など複雑な作業ができなくなる
・よく知っている場所で迷子になる(空間認識と方向感覚の悪化)
・言葉がうまく出てこない
などが比較的よくある症状です。

2番めに多いのは「脳血管性認知症」で、認知症の25〜50%を占めています。脳梗塞や脳出血などが原因だったり、明らかな脳卒中をしたことがなくても、脳の血管が傷むと脳の神経細胞も傷みますので、認知症の症状が出ます。こちらは、お気づきかと思いますが、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などの生活習慣が原因になります。アルツハイマー型認知症との「混合型」も比較的多いです。症状はアルツハイマー型と区別が難しいですが、感情失禁と言って、突然泣き出したりするのが特徴の一つです。

その次に多いのが「レビー小体型認知症」です。こちらはアルツハイマーよりも少し症状が激しいのが特徴で、物忘れに加えて、幻視(いないはずの人と喋っている)パーキンソン病に似た症状(手の震え、歩行が小刻みになる、転びやすいなど)があると、レビー小体型を疑います。

他にも前頭側頭型認知症(怒りっぽくなるなど性格が変わる)、正常圧水頭症(歩行困難や失禁)、パーキンソン病型認知症、多系統萎縮症などの神経の病気に伴うもの、など認知症の病型はたくさんあり、微妙に症状が異なりますが、区別が難しいことも多いです。大学病院など高度な医療機関で脳血流の画像検査をしたり、神経の状態を詳しく調べれば診断がつくものもありますが、診療所ではそこまで細かく診断をつけるのは難しいです。

ただ、「治療が可能な認知症かどうか」は診療所でも判断ができます。ですので、ご家族が認知症かな?と疑った場合はぜひ一度診療所を受診していただければと思います。特に、「急激に物忘れが進んだ」「急に怒りっぽくなった」「突然動かなくなった」など、症状が短期間に悪くなったような場合は、まれにですが、血液検査などで原因が特定できることもあります。具体的には甲状腺機能低下症、ビタミン不足、ナトリウムやカルシウムの異常などで、これらは治療が可能です。最近始めたお薬のせいで調子が悪くなっていて、やめれば改善するようなこともありますし、感染症や脱水などで体調が悪いせいで一時的に調子がおかしいだけのこともないわけではありません。

残念ながら現在の医療ではアルツハイマーやレビー小体型、血管性認知症などには決定的な治療がないのが現状です。次回詳しくお話ししますが、ご本人、ご家族さんが困っている症状に対してお薬を出したり、介護保険を使ってできる限りの認知機能維持を図ったり、ご家族の負担を減らす方法を一緒に考えましょう。東通村診療所では「お年だからしょうがないですね、まあなんとか頑張ってください」みたいなことはしません。認知症になった日からお亡くなりになるまでの間、医療、介護、福祉のあらゆる面でご本人とご家族をサポートします。

認知症は奥が深い問題です。ご本人の中で起きているのはどんなことなのか、どんな経過をたどるか、それについてどう向き合っていけば、誰に相談すれば良いのかなど、今後も続けてお話を載せていきます。

(医師:濱近草平)

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