風邪の話🤧🤧vol.2 〜インフルエンザとその薬、予防〜

健康や病気のこと

ウイルスによる呼吸器感染症、というくくりで言うと、インフルエンザも「風邪」です。
ただしご存知の通り、普通の風邪よりも症状が強く、感染力も強いので、その意味では一般的な風邪とは異なるものです。

インフルエンザの、風邪とは異なる特徴
・症状が突然出現する
・高熱が出やすい
・のど、鼻だけでなく、強い寒気、関節痛、だるさなど、症状が全身に出ることが多い
 (年によっては嘔吐・下痢が多いこともあります)
・感染力が強い!

「薬がある」のも風邪とは異なる点です。最も一般的なのがオセルタミビル(商品名:タミフル)で、1日2回錠剤を内服。5日間です。腎臓が悪い方は量を減らします。ザナミビル(商品名:リレンザ)、ラニナミビル(商品名:イナビル)は吸入薬です。前者はタミフルと同じく1日2回吸入を5日間。後者は1回の吸入だけです。これだけ聞くとラニナミビルが一番良さそうですが、1回の吸入に失敗すると意味がないので、確実性にはやや欠けます。私は、年齢が若くて確実に吸入を使える方ならラニナミビル、ザナミビルについてもご相談しますが、ご高齢で抗ウイルス薬の希望がある場合は基本的には飲み薬のオセルタミビルを処方するようにしています。

ただし、風邪の話vol.1でご説明したように、これらの薬も「ウイルスを増やすのを抑える」ことが目的で、ウイルスを殺すわけではありません。ウイルスとは自分の免疫力で戦うことが基本です。なので、いずれの薬も「発症から2日以内」の方が対象で、それ以降は飲んでも効果が期待できません。月曜日に症状が出始めた方が金曜日に受診されてインフルエンザと診断された場合、もう十分にウイルスは増えてしまっていて、しかも体も戦うことができている状態なので、抗ウイルス薬は意味がないのです。

「それでも飲んでいた方が安心」というお気持ちはよくわかるのですが、薬にはどうしても副作用がつきまといます。飲んだ方が早く治る気がするのですが、ウイルスに関しては、患者さんの免疫力と体力がウイルスに打ち勝ったのと、薬を飲んでいた時期が一致していただけ、ということが往々にしてあります。タミフルが本当に効いたのか、単に体がウイルスをやっつけたのか、正確なところはわかりません。なので、症状が出てまる2日が経過していたら抗ウイルス薬は使わない、と考えておいていただければと思います。(同じことは新型コロナウイルスにも言えて、こちらは期間に少し幅があり、抗ウイルス薬の適応は「発症して5日以内」です。それ以降は、副作用が生じるリスクをとってまで抗ウイルス薬を無理に飲むメリットはありません)

さらに、一時期ニュースで盛んに報じられていましたが、オセルタミビルは、未成年(特に男子)の異常行動との関係が研究されています。現在は、薬の影響も完全に否定はされていませんが、インフルエンザ感染そのもので意識の異常が起きる可能性が高い、というところで、結論がはっきりとはしていません。ただし、突然走り出して転落するなどの大きな事故につながりかねないので、小中学生にはあまりタミフルを使いたくないのが医師(少なくとも私は)の本音です。抗ウイルス薬を飲んでいてもいなくても、インフルエンザにかかった未成年者、特に小中学生くらいの年齢のお子さんからは、発症から2日程度は注意して状態を見守る必要があります。

予防は昔ながらの「うがい」「手洗い」「マスク」、そして「ワクチン」です。
ウイルスは体に入ってしまうと増えるので、入れないことが基本です。インフルエンザウイルスは「飛沫感染」と言って、かかっている人の咳やくしゃみで飛び散った唾液や鼻水のかけらを吸い込んだり、それらを触って、それで自分の鼻や口に触ることで感染します。新型コロナウイルスが流行した後、多くの人がマスクをしたことによってインフルエンザ感染者が大きく減ったのはご存知の通りです。ワクチンは感染を完全に防ぐことはできませんが、かかってしまった時の症状を軽めに抑えることはできます。

とはいえ、家族がかかってしまったら、完全に防ぐことには限界があります。かかってしまったら、辛い症状に対してはお薬を飲んで(抗ウイルス薬は必ず飲まないといけないものではありません。特に若くて元気な方は)、よく寝て、栄養のあるものを少量摂って、水分をとって、よく寝て、、、あとは治るのを待つしかありません。

高齢者や、糖尿病、COPD、がんの治療中などの方は、そうでない方と比べて悪化するリスクが高くなります。一番多い合併症は肺炎です。インフルエンザだけで肺炎になることもありますし、二次感染といってインフルエンザに罹患して弱った肺の中で肺炎球菌や黄色ブドウ球菌が繁殖して細菌感染を合併することもあります。悪化リスクの高い方は、まずはワクチンを確実に接種することをお勧めします。そして冬の間はできるだけマスクをして、体を元気に保つこと。かかってしまったら、早めの受診をお願いします。

※東通村診療所では11月1日(水)より、インフルエンザワクチン接種の予約を開始します。
詳しくは以下のリンクをご参照ください。
【2023年】インフルエンザ予防接種の予約詳細ページ

(医師:濱近草平)

コメント

タイトルとURLをコピーしました