東通だからこそ、熱中症に注意!

健康や病気のこと
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毎日暑いですね。といっても西日本育ちの僕には、天国かと思うくらい青森は涼しいのですが😀

週間天気予報を見ると、今週の東通村の気温は最高25℃、最低20℃くらいです。東京から西では40℃に迫るような気温が連日報道されていることを考えると、青森、東通では熱中症の心配はない、、、わけではないのです。

「東通はあんまり暑くないから」という意識がむしろ危ないと言ってもいいです。「医者はすぐあれに気をつけろこれに気をつけろとうるさいな」と思われるかもですが、実際、東通村診療所でもすでにこの夏、熱中症の患者さんを何人か治療しています。

熱中症は細かく分けるといろんなタイプがあるのですが、最近はその分け方にはあまり意味がないとも言われていて、ざっくり2つに分けてお話ししたいと思います。

①昔ながらの熱中症(いわゆる日射病)

気温が高い日に外で激しい運動をしたり、一日中屋外での仕事をしたりした時になる「典型的な熱中症」です。今は医学的には使わない言葉ですが、昔は日射病と言われていました。発熱、大量の汗(逆に汗が全く出ないこともあること発 に注意です)、筋肉の硬直、けいれん、吐き気、だるさ、腹痛などの症状が出ます。ひどくなると意識障害になり、声をかけても反応がなくなったりするとかなり重症で、その場合はすぐに救急車を呼びましょう。

僕が西日本の病院で勤務している時に経験した熱中症の方を思い出すと、「朝から外でごみ収拾の仕事をしていた」「スーパーの揚げ物売り場で半日働いていた」「体育館で部活の剣道の練習をしていた」など、高温で湿度の高い環境で体を動かしていた方たちばかりでした。救急室に大きな扇風機を2台持ちこんで体を冷やし、どんどん点滴をして、硬直して激しい痛みが出ている足を数人がかりで押さえて、つってしまった足をなんとか元に戻したことなどを思い出します。

そのうちのお一人は腎臓に障害が出たので入院となりました(無事治って1週間くらいで退院されました)。熱中症はものすごく簡単に言ってしまうと体の水分が大量に失われてしまう状態なので、全身の臓器に血や水が足りなくなって症状が出ます。筋肉の血流が悪くなると硬直、けいれんして痛みますし、一番よくあるのは脱水による腎障害です(壊れた筋肉の組織が腎臓に詰まって、放っておくと透析しなければならなくなります)。脳に血流が行かなくなると意識を保てなくなって反応がなくなるわけです。

熱中症(日射病)になりやすい状況は、基本的には「暑くて湿気が多い所で体を動かすこと」です。気温が30℃に満たないから大丈夫、と思ってはいけません。あくまで私の見る限りですが、寒い地域の人ほど暑さに対する順応性は低いです。例えば沖縄の人と比べると、東通村の人は低めの温度でも熱中症になる危険性が高いです。

湿気も重要な要素です。天気がカラッとしていれば人体は汗によって熱を逃すことができますが、湿気が高い場合はそれができず、熱が体の内側にこもります。同じ理屈で、長袖などを着て作業している場合は、気温が高くなくても体の温度はどんどん上がってしまい、熱中症になる危険は十分にあります。

体力が落ちている場合も熱中症になりやすいことがわかっています。70歳以上の方、肥満、睡眠不足、お酒をよく飲む人(アルコールを分解するのに体内の水が使われるので、前日に飲酒した人は特に要注意です)、最近風邪を引いたり病気をした人などは、そうでない人に比べて熱中症になりやすいと考えましょう。

予防は、これまで書いてきたことの逆をすれば良いわけです。

気温が高い日、湿度が高い日は、外での作業は控える。そうは言っても働かないといけない場合があるのは重々承知していますので、こまめに休憩を取り、水分をとりましょう。できれば少しの塩気と糖分も取れればベストです。山の中の作業などで厚着にならざるを得ない場合は、汗を吸ったシャツを着替える、休憩時には熱がこもらないように服を脱ぐ、などしてみてください。

夏は眠りにくいですが、よく眠ることも重要です。お酒を飲みすぎない。飲んだら水やスポーツドリンクもしっかり飲む。あとは、一緒に働いている方(特に高齢の方や病気がちの方、仕事前から疲れている感じの方など)の調子をよくみてあげてください。

「少し疲れた気がする」程度で、休憩と水分補給で体調が戻るようなら必ずしも受診する必要はありませんが、持病があったり、腎臓が心配だったり、周りから見てなんとなく心配だったりする時は迷わず診療所や近くの医療機関を受診しましょう。熱中症のきっかけが実は感染症だった、なんてこともありますし、万が一腎臓が傷んでしまったら大ごとです。特に子供さんは脱水に弱いので、ぐったりしているようならすぐに病院に来てください。

②高齢者の「家の中の熱中症」

東通村に来て、訪問診療でご家庭にお邪魔して、「なんで7月に窓を閉め切っているの!?」「どうしてそんなに厚着なんですか!?」「毛布必要ですか今日みたいな日に!?」と、声には出しませんが、心で何度か叫びました。いや、実際に声に出ていたと思います。暑い地域では夏場に冷房なしで部屋を閉め切るなんてことは絶対にありませんので、カルチャーショックでした。

ほぼみなさん高齢者です。これは仕方ない面があって、ご高齢になると誰しも、暑さ、寒さに対する感覚が鈍くなり、暑さに対するセンサーがあまり働かなくなります。東通は一年を通じると気温が低い日々の方が圧倒的に長いので、みなさん暑さではなく寒さに体を順応させていますから、夏でも少し涼しい風が吹くと「寒い」と感じてしまうのはしょうがないと思います。

加えて、高齢になると喉の渇きを感じにくくなり、脱水になりやすくなります。そうすると、暑い地域では考えられないことですが、25℃くらいの涼しい日に、室内でしっかり着込んで(薪ストーブが焚かれていることもありました)、気がついたら軽い熱中症になっている、なんてことが起こり得るのです。

日射病と違ってその場合の熱中症は「熱中症としては」あまり重症にはなりません。日射病に比べると、大量に水分が奪われたり、筋肉がけいれんしたりするわけではありませんので。

問題は、それが「高齢者であること」です。多くの方はなんらかの持病をお持ちで、特に心臓や腎臓が悪い方は要注意です。心臓が悪い方は利尿薬(体に水分が貯まりにくようにする薬。ラシックスなど)を飲んでいることも多いので、簡単に脱水になり、腎臓を悪くします。若者ならサウナに行ってスッキリ、ちょっとだるくて今日はよく眠れそう、くらいの感じの状態かもしれませんが、80歳を超えている方では下手すると命取りになります。

私たち医師も夏場はそれぞれの患者さんの血圧や認知機能などを総合的に考えて、利尿薬を減らすなどの調整はしていますが、それだけでは限界があります。ご家族様にお願いしたいことは、どうか、夏の間は窓を閉め切らないで、厚着は避けて、風邪よりも熱中症を怖れていただければと思います。お一人暮らしの高齢者の方に心当たりがあれば、暑い日には様子を見に行っていただいて、「窓開けて涼しくしないとダメだよ」「ちゃんと水飲んでるか?」とお声をかけてあげてください。

(医師:濱近草平)

 

 

 

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