血圧の薬って、一生飲まないといけないの?

健康や病気のこと

血圧が高い方に薬をすすめたとき、
「先生、血圧の薬って飲み始めると一生やめられないんでしょ?」とよくご質問を受けます。

「必ずしもそんなことはありませんよ」
というのが答えです。

食事に気をつける(主に減塩)、運動を始める、体重が減った、禁煙できたなど、生活が変わったことで血圧が下がり、血圧の薬を飲まなくてよくなる方はたくさんいらっしゃいます。(ただし、他の病気との兼ね合いや、薬でなければ抑えられない他の病気による高血圧などの場合、長期間にわたって血圧の薬を飲み続けなければならないことはあります。)

「そもそも高血圧がなぜ体に良くないのか」
「医者は何を考えて血圧の薬を調整しているのか」

今回はそのあたりについてお話しようと思います。

僕ら医者は「家で血圧を測ってくださいね」とよく言います。うるさいな、と思われている方も多いと思いますので申し訳ないのですが、これには理由があって「ご自宅での血圧こそがその人の本当の血圧である」からです。

診療所に来た時や健康診断の時にびっくりするくらい血圧が高くなった、というご経験をお持ちの方は多いと思います。

これはある意味自然なことで、人間は緊張したり、運動したり、いわゆる「頑張らないといけない時」、「非日常時」には、全身の臓器に血液を送らないといけないので血圧は自然と上がります。ただ、これは1日の中でそれほど長い時間ではないので、本当の意味でのその人の血圧ではないのです。

寝ている時間を含め、一番長い時間を過ごすご自宅での血圧こそが、その方の血管が一番長い時間影響を受けている血圧なので、医者としてはそれを知りたい。今の時代の医者は、日本中どこでも(おそらく海外でも)、基本的にその方のご自宅での血圧を基準にお薬を調整します。

血圧を下げる目的は、高血圧の期間が長くなると血管が痛めつけられて、心筋梗塞や大動脈解離、脳梗塞や脳出血、透析などのリスクがどんどん上がってくるからです。

「血圧高いけど何にも体の調子は悪くない」と言われる方もいらっしゃいますが、基本的に血圧が高くても症状は体には現れません(低すぎるとふらついたりすることはあります)。知らないうちに体の中で血管や臓器が痛めつけられて、ある日大病になるのを防ぐ。それが血圧を下げる最大の目的です。

診療所で上が180、下が100を超えているような方は、自宅でもかなり血圧が高い(つまり日常的に血管が痛めつけられている)可能性が非常に高く、その時点でお薬を勧めます。

一方で、診療所で150/90くらいの方は、おうちでは130/80くらいかもしれません。その場合、まずは自宅(あるいはリラックスできる職場)などでの血圧記録をお願いします。同時に、塩分を控える、タバコを控える、軽い運動をする、体重を減らすなど、薬に頼らなくても血圧を下げられる生活習慣の改善をおすすめします。

それでも自宅血圧が高い場合、血圧の薬を処方することになります。年齢とともに誰でも血管は硬くなりますし、体質もありますので、生活習慣の改善だけでは難しい場合、薬の力を借ります。(食事に気をつけたり運動したりすることは効果があるので継続します)

また、10人に1人くらいの割合でホルモンの病気などで血圧が高くなっている方がいるので、血液検査でそのような病気が隠れていないかを確認することもあります。

「血圧の薬を出された時に、心電図やレントゲンもとったな」という方も多いと思います。血圧を下げる目的は、血管を守り、心臓や脳を守ることが最大の目的です。血圧が高いために心不全の方向に進んでいないか、不整脈が出ていないか、などを確認するのが目的です。

医者は血圧値を参考にしながらも、数字だけ見てお薬を増やしたり減らしたりしているわけではありません。

気にしているのは、血管、心臓、脳、腎臓などが傷んでいないか。

タバコを吸っている方、糖尿病がある方、過去に脳梗塞や心筋梗塞になったことがある方、腎臓が悪い方、などは特に血管が傷んでいる可能性が高いので、薬を増やして申し訳ないと思いつつ、
「もう一粒(時には二粒)増やしましょうね」「別のお薬に変えてみましょうね」などと、
先々で大きな病気をして欲しくない、繰り返して欲しくない、との思いで薬を調整しています。

結論として、心筋梗塞や脳卒中などの大きな病気にかかる心配が少なくなった、と判断できれば、血圧の薬はやめることができます。

そのためには生活習慣の改善が一番です。
診療所では簡単な尿検査で塩分摂取量を測ったり、高血圧のせいで心臓が悪くなっていないかを様々な検査で調べることもできますし、栄養士さんから血圧を下げるために食事で気を付ける点について話を聞いていただくこともできます。

いつでもご相談いただければと思います。

次回血圧についてお話しする時は、他のご病気との兼ね合いや、お出ししている薬の特徴などについて、できるだけわかりやすくお話しできればと思います。 (医師:濱近草平)

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