こわーい、糖尿病 part2

健康や病気のこと

前回の記事【 こわーい、糖尿病 】(2023.12.29掲載)に続き、糖尿病の話です。

「糖尿病」という言葉が病気の本質を言い表せていない、ということで名称変更が唱えられており、僕もこれには賛成です。
考えてみると「肺炎」「左前腕骨折」「頭部湿疹」などと聞くと、起きていること、症状のイメージが湧きやすいのですが、生活習慣病系の「高血圧症」「糖尿病」「脂質異常症」などは、それはそうなんだけど、だから何?というところはあって、なかなか薬飲む気にならないよねー、というのはわかる気もします。

「体内インフラ破壊病」というと僕的にはピッタリです。それくらい、糖尿病は怖い病気です。糖が、全身の血管と神経を傷める、つまり、身体中のいろんなところに影響が大きいのです。

前回は、神経障害と眼障害、腎障害について書きました。まだまだ怖い話は続きます。

眼や腎臓の血管はどちらかというと細くて小さな血管の障害です。血管にも太いものは当然あるわけで、大血管の障害をも、糖尿病は引き起こします。糖尿病は動脈硬化性疾患の発症・死亡リスクを2〜4倍上昇させることが知られており、恐ろしいことに、糖尿病発症前(予備軍)の状態でも、心筋梗塞などの冠動脈疾患の発症率が上昇することが報告されています。

脳卒中も同じです。特に脳の血管が詰まる脳梗塞になるリスクは、男性では2倍以上、女性では3倍以上にもまります。これらのように、細い血管がじわじわと体を蝕んでいく一方で、太い血管に突然大きな病気を発症するリスクをもたらすのが糖尿病です。
さらに、癌のリスクが上昇することも知られており、癌の種類にもよりますが、糖尿病があると平均してあらゆる癌になる危険が1.5〜2.0倍上昇します。最近の若い医師の中には、糖尿病があるから、という理由で特に体調不良がなくても全身のCTを撮る先生も時々いますが、あながち「やり過ぎ」とも言えません。

医者がいろいろ怖い話ばかりすると病院から足が遠のくと思います。申し訳なく思います。もちろん年齢によって目標とするところは違っていて、やはり若い方、特に40〜60代くらいの方で仕事が忙しく、自分の体のケアがおろそかになりがちな方ほど、糖尿病がおそろしいものだ、ということは理解して欲しいところです。血圧が高い、喫煙している、などの条件が重なるならさらに血管は悲鳴をあげています。

食事に気をつける、運動する習慣をつける、ということも大切です。当院でも栄養指導を行っているのでいつでも相談してください。
しかし、何より大切なのは命を守ることです。忙しくてついつい外食がち、運動もできない、というお気持ち、よくわかります。その際は一旦お薬に頼るのは決して悪いことではありません。まずは一度体を安全な域にまで戻して、それから食事運動に気をつけるのでも良いと思います。健康診断などで指摘された、家系的に糖尿病が多くて最近自分も太ってきた、など、気になることがある方は、いつでも受診してください。

(医師:濱近草平)

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