読書の秋

いろいろ

食欲の秋だろ!という声も聞こえます。
否定はしませんが、僕は本を読むのも好きです。

小学校4年生くらいの時に、教室に置いてあった子供向けの本に突然夢中になったのが最初でした。何の本だったのか覚えていないのですが、借りてきて寝るまで読んで、続きが読みたくて朝早く起きてまた読んでいたことを思い出します。

僕の実家は裕福ではなく、あまり物を買ってはもらえなかったのですが、父も母も本好きで、本だけは頼めばわりと買ってもらえました。家にある文学全集も時々読んでいました。小学校高学年から中学生にかけては夏目漱石の「こころ」、芥川龍之介「地獄変」、川端康成「雪国」、とベタな日本文学をいろいろ読み、映画になった「優駿」で宮本輝を好きになって「泥の河」「螢川」「錦繍」など、今考えるとかなり大人な内容の本を読んだりもしました。ちょっと背伸びして想像力を膨らませるのが、きっとその頃楽しかったんだと思います。

一番好きだったのは宮沢賢治かなと思います。「注文の多い料理店」「風の又三郎」等々好きですが、なんといっても「銀河鉄道の夜」です。僕が小学生の時にアニメ映画にもなり、地元の、今はもうない小さな映画館で観たのですが、細野晴臣の不思議な旋律が流れる中、小説の一節が朗読される幻想的なエンディングは、30年以上経った今も忘れられません。物語世界との触れ合いの中でだんだんと自分が作られていくような、不思議な感覚。思春期直前のそんな記憶の中に「銀河鉄道の夜」があります。

高校生くらいになると少し世の中を斜めに見るようになるもので、カミュ「異邦人」、ランボー「地獄の季節」、プルースト「失われた時を求めて」などと、ちょっとスカした外国文学をかじったりもしました。そして大学で文学部に入ると、田舎のちょっと本を読んでる程度の僕なんか相手にもならないモンスター級の読書家たちがたくさんいて、いろんな本を教えてもらいました、、、が、その頃僕は中国語初級(麻雀のことです)の方に夢中で、あまり本は読みませんでした。

今はなんだか「理屈っぽいな」と思ってしまうので村上春樹に手が出ないのですが、高校生から大学にかけては「ノルウェイの森」「ダンス・ダンス・ダンス」「羊をめぐる冒険」「風の歌を聴け」「中国行きのスロウ・ボート」など、初期の、瑞々しくて疾走感のある作品群を夢中で読みました。スマホのない時代、電車に乗るときはいつも文庫本を一冊持って。今思うとあれもいいものでした。

大学時代にいわゆる純文学から少し気持ちが離れて、ミステリー作品だけど、いわゆる謎解きではない読み応えのある純文学的ミステリー(みたいなジャンルが僕の中にはあるのです)をよく読みました。宮部みゆき「火車」「龍は眠る」「理由」、東野圭吾「白夜行」などなど。「白夜行」は山田孝之と綾瀬はるかのドラマも秀逸でした。中でも一番好きだったのは高村薫という作家で、「マークスの山」「照柿」「レディ・ジョーカー」の三部作は一生ものです。特に「照柿」が一番好きで、三冊の中で唯一映画にはなっていないのですが、今でも本棚に置いてあります。

読めば読むほど賢くなるんだろうと思いますし、何より、実用的なものばかりじゃなくて、どっぷり物語世界に浸かりたい、、、と思うこともありますが、働き始めるとなかなかできないのが辛いところです。そんなわけで今はもっぱらマンガです(笑)

次回はマンガの話をします!

(医師:濱近草平)

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